バッドフィンガー/ノー・ダイス

ビートルズより好きだった。ずっと親しみが持てた。
彼らの弟分だとか、酔っ払ったビートルズだとか、ありがたくない形容がついてまわったバッドフィンガー。後にふたりの自殺者を出したことで悲劇のバンドとも呼ばれたバッドフィンガー。

最大のヒット曲「デイ・アフター・デイ」を含む『ストレート・アップ』が、一般的にはそんな彼らを代表する1枚ということになるのだろうが、ぼくの一番のお気に入りはその前作である『ノー・ダイス』。初めて聴いて虜になった彼らの曲「嵐の恋」も、カバーされて大ヒットした「ウイズアウト・ユー」のオリジナルもここにあり、さらにはダルなロケンロー「アイ・キャント・テイク・イット」や美味なる旋律「ミッドナイト・コーラー」のオマケつき。希代の名盤ではけっしてないが、非常に小粋な佳作といえよう。上の下、もしくは中の上あたりに位置するその佇まいが好きなのだ。

ここに「明日の風」と、あと『素敵な君』から2、3曲、そして『ストレート・アップ』からは「スィート・チューズデイ・モーニング」を持ってくれば、ぼくにとってのベスト・オブ・バッドフィンガーの出来上がり。「デイ・アフター・デイ」? いらない。

2003.09