カーペンターズ/シングルズ 1969-1973

カーペンターズが嫌いだった。
その全盛期をほぼ学生時代と重ならせ、多くのヒット曲が耳になじんでいたのにもかかわらず。無関心だったのではなく、はっきり嫌いだと思っていた。その手のわかりやすいポップスより、メッセージ性豊かなフォークや、演奏に重きを置いたロックの方が上等な音楽だと信じていたのだ。

そんな呪縛が解けた頃、突如頭のなかで鳴り始めたのが「イエスタデイ・ワンス・モア」。それがあまりにもうるさくしつこいので、とうとう根負けしてえいやと買ってしまったのがこのシングル・ヒット集。実にそのヒットから10年以上が過ぎており、歌うカレンはといえばもはやこの世の人ではなくなっていた。

10年のときを経て、ラジオからではなく、初めてオーディオ装置で聴いたカレンの歌声の、しかしなんと見事なことだったろう。なんと美しい発音だったことだろう。特に「スーパースター」。ぐっときた。ぞくぞくした。聴き惚れた。

すみません、嫌いだなんて言ってたぼくが馬鹿でした。
圧倒的な力量を見せつけられた思いで、ぼくは懺悔の気持ちとともに、初めてカレンの早すぎる死を悼むのだった。

2003.07