ピンク・フロイド/おせっかい

「エコーズ」。
23分を超えるその長さと、10代の頃から繰り返し聴いた回数を思えば、ぼくがこの曲に費やした時間は他のどんな曲よりも多いということになるのかもしれない。その音空間に身を置くとやがて必ず襲われる、ゆらゆらと意識が体から立ち昇っていくような感覚の、虜にぼくはなっていた。

デイヴ・ギルモアがぼくのヒーローになったのもここからだ。その真の力量は『狂気』以降に発揮されることになるのだが、『原子心母』では窺い知れなかった片鱗をここにみる。「エコーズ」においてソナーのようなキーボードが宇宙空間の闇を暗示しているとしたら、ギルモアのギターは拓けゆき近づく星雲を垣間見せるものである。たゆたうようなその音にぼくは胎児のように包まれ、終盤、ゆったりとキーボードと呼応しあうに至ってついに涙ぐんでしまうのが常だった。

こうした感動の前には、アルバム・トップを飾るヒット曲「吹けよ風、呼べよ嵐」ですら豪華特典のようなものであるし、他の4曲の出来不出来など云々さえされないのである。

2002.11