フリートウッド・マック/ファンタスティック・マック
ミック・フリートウッドとジョン・マクヴィー。ふたりのリズム隊がそのままバンド名となったフリートウッド・マックは、しかしながら、常に入代り立代りする他のメンバーを看板とすることで生きのび、頂点を極めた稀有なバンドである。その頂点への道は、ふたりの新メンバーを迎えて75年に発表されたこの『ファンタスティック・マック』によって開かれた。誰に訊いてもそう言うだろう。ここから始まる彼らの快進撃は、それほど鮮やかで際立っていたのである。
ふたりの新メンバーは、売れないデュオだったリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックス。大抜擢であることは、ギタリストとヴォーカリストというポジション以上に、全11曲中7曲までが彼らの作品で占められていることでもわかる。しかも6曲めの「クリスタル」に至っては、売れなかったデュオ時代の作品だ。まったくとてつもない原石を、フリートウッド・マックは見つけ出してきたものだ。実に、オーディションもなしに。
「リアノン」で堂に入った歌いっぷりを聴かせながら、裏ジャケで垢抜けない姿を晒すスティーヴィー・ニックスは数年後、妖精の名をほしいままにする。もうひとりの女性歌手、クリスティン・マクヴィーとの間でぼくの気持ちは揺れ動く。恐るべし、マックの三枚看板。
2007.05 |