はっぴいえんど/風街ろまん

ものの本によると、日本語の詞をロックのリズムにのせた最初の存在は、はっぴいえんどであるそうな。はたして彼らの音楽がロックであるのかどうか、いまだにぼくには謎である。大きな声ではいえないが。

そして、彼らがポップスの世界において詞の在り方とその唱法にただならぬ改革をもたらしたのかもしれないことも、今となってはぼくにはどうでもいいことである。

それら小難しいことは投げやって、ぼくにとってのはっぴいえんどは、結局「風をあつめて」と「夏なんです」へと収束する。情景を描き出す手腕の見事さゆえに。情景そのもののみずみずしさゆえに。そのはかない美しさを前に、ロックであるか否かは問いの体をなしさえしない。

おまけは「暗闇坂むささび変化」。軽やかなフラット・マンドリンの響きと大瀧のハモリが微笑ましくて大好きだ。細野と大瀧の間を行ったり来たりするぼくの放浪はここから始まる。

2003.05