平山みき/鬼ヶ島

70年代初頭、「真夏の出来事」の大ヒットを放った彼女が、橋本淳・筒美京平の黄金コンビの手から離れ、近田春夫にプロデュースを委ねた82年の作品。アレンジと演奏は彼のバンド、ビブラトーンズで、形としては彼らがやりたかったことに平山みきがまんまとのせられてしまったわけだが、過激なアイデアと思い切りのいい歌いっぷりが拮抗しながら疾走していくさまが、ぼくには実におもしろい。

あっけらかんと不倫を告白する冒頭の「ひろ子さん」から、追い立てられるように気ぜわしく男を誘う「プールサイド・クラッシュ」、ドラマチックな展開と異質な男性コーラスが印象的な「蜃気楼の街」、なぜこんな他愛のないことが歌になってしまうんだ、しかもこの大仰なアレンジでと思わずにはいられない「よくあるはなし」、他人の人生を生きる女優めいたなりきりぶりを示す「おしゃべりルージュ」などなど、にやりとさせられる小粋な楽曲満載。ただ、ラストのタイトル曲だけが、難解に過ぎるきらいなきにしもあらず。

2002.11