マウンテン/ナンタケット・スレイライド

4人めのクリームと言われたプロデューサー、フェリックス・パパラルディが無名のギタリスト、レスリー・ウエストに惚れこんで急遽結成されたマウンテンの代表作として挙げられがちなのが、このサード・アルバム。

確かに「ナンタケット・スレイライド」はマウンテンを代表する曲だが、しかし、それは6分足らずのスタジオ録音による本作ではなく、ライヴ・アルバム『暗黒への挑戦』での17分に及ぶヴァージョンを聴くべきだろう。ライヴなくして「ナンタケット」名曲説は成立しない。

などと言い放つ一方で、解散から四半世紀を経たこのバンドを今さら聴くには、ベストである『栄光のマウンテン』1枚で十分ではないかという思いも、少なからずある。いずれにしてもこの『ナンタケット・スレイライド』に出番はなさそうだ。

にもかかわらず、ここでこうして取り上げてしまうのは、ひとえに「暗黒への旅路」の存在ゆえである。パパラルディとウエストの主題作りのうまさが如実に出た、これだけの出来栄えを持つ曲が、なぜかベスト・アルバムには収録されていないのだ。この扱いはないんじゃないかと思う。ほとんどアドリブめいたギター・ソロも、血湧き肉踊るものだというのに。

というわけで、CDへの買い替えはベストとライヴだけ押さえておけばいいやとは、マウンテンの場合、いかないのであった。いや、ぼくの場合というべきか。

2002.11