中山ラビ/ひらひら

石油ショックによる塩化ビニール不足で発売が1ヶ月遅れたというエピソードを持つ、74年のセカンド・アルバム。

気鋭のミュージシャン同士がぶつかり合うような真に迫った演奏にのせて、どこか投げやりで突き放すような歌を聴かせた1枚めとは打って変って、音も歌も軽くやさしく、クセなく聴きやすくまとめられているのが本作だ。新たに迎えられた安田裕美の、これは売ることを念頭に置いたプロデュースの賜物だろう。実際、中山ラビの知名度はここから急上昇していくことになる。

そうした変化が最も顕著なのがオープニングを飾る「川にそって」であり、タイトルともなった「ひらひら」だ。やさしげな歌いっぷりには驚かされたものだった。それは前作でいかに彼女が気負い、突っ張っていたのかがわかるような気がするほどに。

とはいえ、収められた曲の半数をすでにライヴで経験していたぼくにとっては、ここでの音はいささか食い足りないものではあった。完全にリアレンジされ妙に軽く仕上がった「ドアをあけて」などは特にそうだが、中山ラビには統制されたスタジオ・サウンドよりも、ラフなバンド・サウンドがよく似合うということは、やがて証明されていく。

2004.10