ザ・スミス/ハットフル・オブ・ホロウ

ぼくにとっての最後のロック・バンド、ザ・スミス、84年のセカンド・アルバム。
シングル盤としての発表ずみの曲とラジオ出演時などのライヴとが混在した変則的な構成ながら、音や演奏のムラもなければ、この手の作品にありがちな散漫な印象もない。それどころかむしろ、ガラス細工のような脆さを孕んだ美しさをたたえるさまは、珠玉の名こそがふさわしい。

一般にスミスを語るときついて回るのは、リーダーであり歌い手でもあるモリッシーの人物像やその詞の世界だが、ぼくの興味は徹頭徹尾ジョニー・マーのギターにある。こんなにもみずみずしいギターを、後にも先にもぼくは知らない。他の誰のようでも、彼はない。小粋なそのリフ、そのフレーズ。「ジス・チャーミング・マン」はどうだ。「ガール・アフレイド」は。音でねじ伏せてこその音楽だ。歌詞カードと首っ引きの音楽なんて、ぼくはいらない。

ただ、そんなマーの輝きも、モリッシーを媒介にしていたことは明らかで、スミスとはこのふたつの魂が切り結んだ刹那に生まれた、あまりに純な結晶だったのだろうなぁと後になってぼくは思うのだった。

2004.12