シルヴィ・バルタン/ベスト

映画に、CMにと立て続けに使用され、見事リバイバル・ヒットしたシルヴィ・バルタンの「あなたのとりこ」、それはぼくが初めて買った洋楽シングルだった。

ヒット・チャートを飾る洋楽への興味はその半年ほど前からにわかに強くなってはいたが、いいなと思った曲のことごとくは先に友人たちに買われていた。初めての買物に対する大いなる意気込みは、だから、やがてめぐってきたその日、ルー・クリスティの「魔法」、アース&ファイヤーの「シーズン」と併せて3枚を同時に買ってしまうという真似をぼくにさせた。

でありながら「初めて買った洋楽は?」という問いに、ぼくはしばしばシルヴィ・バルタンとだけ答えてすませる。代表の1曲というわけだ。個人的なことのみならず、時代を代表する曲でさえあるという思いがあったからだが、それが今や時代や世代を超えて愛される曲のひとつである。契機はもちろん、映画「ウォーター・ボーイズ」だ。最も感動的なシーンで思いがけずそれを耳にしたとき、ぼくは少しだけ泣いたものだった。映像だけのせいではたぶんない。

ところで、レコードからCDに時代になった頃、わずか14曲入りのこのベスト・アルバムにぼくは3200円も払ったのだが、当然ながらもっと安くてもっと多くの曲が入ったものが今では何種もあることを最後に付け加えておく。

2005.1