ザ・タイガース/ゴールデン・ベスト

ぼくが初めて買ってもらったレコードはスパイダースの「夕陽が泣いている」、テンプターズの「忘れ得ぬ君」、そしてタイガースの「僕のマリー」の3枚だった。3枚同時というのが解せないが、ぼくにかこつけて実は母親が聴きたかったのかもしれない。事情はどうあれ、ぼくにとってそれが初めてのシングル盤だったことにちがいはない。

一方、最後に買ったシングル盤はというと、これも同時に買ったタイガースの「十年ロマンス」と「色つきの女でいてくれよ」の2枚だったような気がしなくもない。もしかするとこの後に大竹しのぶの「かまって音頭」を買っているかもしれないが、シングル人生の最初と最後をタイガースが飾っているという方が聞こえもいいし、話としても上出来だと思われるので、今後そういうことにしておきたい。

というわけで、この『ゴールデン・ベスト』は、そんなタイガースのデビューから再結成時までに出されたシングル盤のA面ばかり収録された全20曲のおいしい1枚。それら往年のジャケットを配したデザインはCDサイズでは苦しいとはいえ、再結成時の曲も含まれているところがミソで、それがなければぼくなどは記憶のなかでだけ鳴っていれば十分。まぁ、それぐらい「十年ロマンス」には思い入れがあるわけで。わはは。

それにしても、往年のベーシスト岸部おさみ、現・岸部一徳、いい役者になりましたなぁ。おいちゃんはうれしいです。

2005.09
沢田研二/ROYAL STRAIGHT FLUSH

79年初出のベスト・アルバム第1弾。

72年の「許されない愛」、73年の「危険なふたり」、74年の「追憶」、75年の「時の過ぎゆくままに」、77年のレコード大賞受賞曲「勝手にしやがれ」、同年の「憎みきれないろくでなし」、78年1月の「サムライ」とそのB面「あなたに今夜はワインをふりかけ」、同年5月の「ダーリング」、8月の「ヤマトより愛をこめて」、9月の「LOVE(抱きしめたい)」、そして79年2月の「カサブランカ・ダンディ」まで全12曲が、時系列にではなく収録されている。

オープニングを飾る「カサブランカ・ダンディ」はぼくの最も好きな曲だが、大の沢田研二ファンという女性にそれをいったら、珍しい人ねと感心されたことがある。ほとんどの人は「時の過ぎゆくままに」を真っ先に挙げるのだそうだ。あぁ、なるほど。

しかし、「カサブランカ・ダンディ」のリフがぼくにはなにより格好よく聞こえるし、次点はやはりよく出来ているとしかいいようがない「勝手にしやがれ」か「TOKIO」あたり、さらにドタバタしたリズムが楽しい「ウィンクでさよなら」が4番手、「時の過ぎゆくままに」はその次だ。威勢のいい曲が、どうもぼくは好きらしい。と〜き〜おっ。ってな感じで。

とはいったものの、80年の「TOKIO」はもちろん、76年の「ウィンクでさよなら」もここではなく、81年の『ROYAL STRAIGHT FLUSH [2]』の収録ナンバーであるから、ジュリーのベストはこの1枚あれば十分だとはぼくにはいえないのであった。それはたぶんすべてのジュリーファンにとっても。

2005.10
沢田研二/ROYAL STRAIGHT FLUSH [2]

81年初出のベスト・アルバム第2弾。

76年の「立ち止まるな ふりむくな」、「ウィンクでさよなら」、「コバルトの季節の中で」、77年の「さよならをいう気もない」、79年の「OH!ギャル」、「ロンリーウルフ」、80年の「TOKIO」、「恋のバッドチューニング」、「酒場でDABADA」、「お前がパラダイス」、81年の「渚のラブレター」、「ストリッパー」までの全12曲。

先のベスト第1弾からわずか2年でのリリースであるため、大ヒットとはいいがたい76年から77年にかけての古いナンバーや、ヒットの大小にかかわらず79年5月から81年までのシングル曲すべてが収められている。収めざるを得なかったともいえる。

先のベストと合わせて『ゴールド』、そこからはみ出した曲で『モア・ゴールド』といった構成が真のベスト・アルバムのありようだと思うのだが、実はこの『ROYAL STRAIGHT FLUSH』シリーズには3もあって、これはさすがにぼくも触手が動かなかった。初出から20余年、CDならではの企画があってもいいのではなかろうか。

ちなみに、沢田研二の黄金時代をぼくは、75年の「時の過ぎゆくままに」から80年の「TOKIO」までだと思っている。75年以前にもヒット曲はいくつかあるが、GS期からの女性ファンの支持にとどまらず一挙にファン層を拡大したのはやはり「時の過ぎゆくままに」だったろうし、81年以降のヒット曲はどれも小粒で、だんだんと規模縮小していくさまが悲しい。さらにいえば、太った沢田研二を見るのはもっと悲しいのであるが。

2005.10