レッド・ツェッペリン/U

深夜のラジオから聞こえてくる「胸いっぱいの愛を」が、中学生のぼくにはなんだか怖かった。圧縮されたような音、迫り来るような音圧に、まさに胸がふさがれるような思いだったのだ。間奏の思わせぶりなシンバルと、左右に振り分けられたうめき。そんな緊迫したムードが息苦しいほどだった。

救いは歪んだ音色のギターで、叩きつけるようなドラムに導かれたそれが、暗雲を引き裂く一筋の光のようにぼくには思えた。あるいは、モスラの卵にひびが入ったその刹那、割れ目からなにやら荘厳な光が漏れるようなさま。

ぼくにとってこのツェッペリンのヒット曲はそんなおどろおどろしいイメージで、繰り返し聴きたくなるような代物ではなかった。なのに後年、所有せずにいられない気持ちに陥ったのは、しつこく頭のなかで鳴るそのリフのせいである。その強力さは、ぼくのなかでクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」とともに双璧をなすのだった。

しかし、せっかくアルバムを手に入れても、聴くのは「胸いっぱいの愛を」と、後はせいぜい「リヴィング・ラヴィング・メイド」ぐらいで、こういうのをまさに猫に小判というのかもしれない。

2002.11