アッサニー・ワサン/RUAM PHLEEN TUT BOARD 1

文字も言葉もわからない国の音楽なんか聴くんじゃない、ましてそんなものを紹介しようとするんじゃないなどとは、どうか言わないでいただきたい。音訳されただけのタイ語というのも扱いにくいが、ワープロ打ちのたったそれだけのシールでもつけてくれる輸入業者の良心に、ぼくは感謝したい気持ちでいっぱいなのだった。

というわけで、アッサニー・ワサン。タイの音楽シーンを語るとき、避けて通ることのできない兄弟デュオ。どちらがアッサニーで、どちらがワサンなのか知らないが、これはそんな彼らのベスト・アルバムであるらしい。タイトルに「1」とあるぐらいだから、「2」だってきっとあるのだろう。それだけの活動歴はあるのだから。

彼らの音楽の最大の魅力は、タイ独自の素朴さと欧米ポップスとの適度なブレンドされ具合にある。明るく大らかなその曲調は、必ずや聴く者をシアワセな気分にさせることだろう。かの国が微笑みの国と呼ばれる秘密は、音楽のなかにもひそんでいるのだ。もはや頬の筋肉の緩みなしに彼らの曲を聴くことなどぼくにはできない。

叩いてみたら思いのほか張力があって、撥の跳ね返りが非常にいい太鼓、そんなタイトさを備えるタイ産シアワセの素。きっと効く。

2002.10