上妻宏光/AGATSUMA
話題の三味線奏者、初のソロ・アルバム。
「じょんがら節」や「あいや節」といった古典の間に挟まるオリジナル曲には、控えめなシンセと躍動する和太鼓が配され、聴き飽きない作りになっている。
一押しは、1曲めの「風」。後半、早弾きが始まり音が転がされだすと、背筋を駆け抜けていくものがある。そこでぼくは、断崖絶壁から冬の海に向かって雄叫ぶ友川かずきの姿を、なぜだかイメージしてしまう。
友川かずきを知らない人には、この際、立松和平でも吉幾三でもまぁかまわないことにしよう。とにかくここは訛りのある人でなければいけない。それが海に向かって絶叫している。興奮するほどに訛りはだんだん強くなって、なにを言っているのだかこちらにはさっぱりわからない。なんだ、そのイメージは。どういう光景だと思うだろう。
知りたくば聴け。そういう曲だ。そして、三味線とはそういう楽器なのである。
2001.12 |