BUACHOMPOO/sunshine day

ジャケットの作りからサウンドの細部に至るまで、台湾清純派を彷彿とさせるブアチョンプー・フォード、通称ブアのセカンド・アルバム。歌詞の「〜チャイ、〜マイ、〜ヤイ」という語尾を聴きとって、ああこれはタイの作品だったのだなと改めて納得した次第。タイにありがちな陽気な猥雑さとはそれほど無縁で、この時代にあってはほとんど奇跡ともいえるような高貴な清潔さに満ち溢れた仕上がりとなっている。

大向こうを唸らせるような派手さはないが、反復を厭わせない聴き心地のよさで、聴くほどにじわじわと味が出る。そんな何度めかに、にわかにぼくは跳ね起きたのだった。この4曲めと9曲め、もしかすると1曲めも5曲めも8曲めも、息の根も止まるほどに甘くはかなく美しいのではないか、と。

震えるのだ、心が。切ないのだ、この胸が。
なにが歌われているのかなんてもちろんわからない。しかし、この曲調、この声は確かになにものかを喚起する。それはたぶんぼくがいつの時代だかに忘れてきたり置き去りにしてきたものどもで、二度とこの身には起こり得ないことどもなのだった。それに気づいたとき、ほんの少しだけぼくは泣いた。

純情路線推進派、乙女チック同盟、おセンチ至上主義者は必聴だ。
入手不可能ならば、ぼくが貸す。

2003.01