マレーシアという国は、6割のマレー人、1割のインド人、そして3割の華人によって構成されているらしい。そのほとんどは福建人であるともいう。

そんな福建人のひとりである蔡可茘には、というかマレーシア在住華人歌手には旧正月を祝う企画作品が異様に多い。中国人としてのアイデンティティといったものを考えるに、大陸や台湾、香港などと比較して、これはかなり興味深い現象ではないかと思われる。

というわけで、この『新年大家好』もタイトルから察しがつくように、旧正月に向けておめでたい曲ばかりを集めた企画盤だ。クレジットに92年とあるこの作品が、ぼくにとっての初めての蔡可茘体験となった。

なったが、しかし、特筆すべきことはそう多くない。オープニングのタイトル曲が、実は葉[イ菁]文による中華圏での大ヒット「瀟灑走一回」のカバーならぬ替え歌であったり、ラストの曲でのプロデューサー張平福による合の手のテンションが尋常でなく笑えるといったことぐらいか。ただ、仁侠映画のテーマを思わせる風雲急な曲調の後者は、これもなにかの替え歌らしいが、かなりいい曲ではある。

2002.07