蔡可茘/福建 2 IN 1 VOL.4

蔡可茘の 2 in 1 シリーズが俄然面白くなってくるのは、94年のこの4作めからだとぼくは思っている。取り上げられた曲の多くは多くは同時期の小鳳鳳とカブり、単独では到底勝ち目がないのだが、 2 in 1 というメドレー・スタイルを取ることによって蔡可茘にも勝機が生まれることがはっきりわかるのだ。

たとえば、小鳳鳳の熱唱があまりにも印象的な「風眞透」。これに「西北風」を加えることで新たなノリが出現するあたり。同様に、小鳳鳳が切々と歌った「三聲無奈」に「十二蓮花」を掛け合わせまったく違った解釈がなされるあたり。プロデューサーにしてアレンジャーでもある張平福の手腕によるものといってしまえばそれまでだが、そんな彼のノリをここにきて蔡可茘は体得したのではないか。あるいは、張平福のアイデアだけが先行していたのが、ここでようやく実を伴なったというべきか。いずれにせよ、張平福も練れ、蔡可茘も鍛えられたのだろう。

それにしても、同じマレーシア在住華人歌手として小鳳鳳を語るとき、他の誰も引き合いに出す必要がないのに対し、蔡可茘について語ろうとすると小鳳鳳に言及せずにはいられないというこの事実。ふたりの力量の差を如実に物語っているのである。

2005.06