齊豫/有没有這種説法
CDに先立ってまずテープで手に入れたこの作品の、B面ばかりをぼくは聴いていた。
それはタイトル曲「有没有這種説法」で始まる。
人間の耳が聴き取ることのできる限界に挑んだような重低音とパーカッション。斬りこんでくる歪んだギター。そして、呪術的なヴォーカル。浮遊感と地に足ついた躍動感との融合だ。
そんな曲に始まり「十二個夜晩」で終るテープのB面に、台湾ポップスの右も左もわからずにいたぼくは魅了されたのだった。
今だって右も左もわかっちゃいない。しかし、奥行きだけはよくわかった。その深さだけは。この曲で。この齊豫で。台湾ポップスに対する敬意をも、それは同時にぼくに植えつけたのだった。
齊豫、そしてこの作品に大きく関わった彼女の弟、齊秦が後に台湾ポップスの牽引者として名を馳せはじめたとき、ぼくは思ったものだった。さもありなん、と。
2002.05 |