Jocie/老鼠愛大米

2004年にネットを通じて大ヒットし、今や中国人なら誰でも知っているといわれる「老鼠愛大米」。中華圏各地で多くの歌手が歌っているようだが、そのシンガポール版がこれ。

特筆すべきはカラオケ2ヴァージョンを含む全9曲、すべて表題曲であるということだ。いわくオリジナル・ヴァージョン、いわくバラード・ヴァージョン、いわくダンス・リミックス……。正直なところ、ダンスだのクラブだのエクステンドなどと題されたものはどこがどうちがうのかよくわからない。ただ、作る側をこれだけの気にさせた原曲のよさはよくわかる。1回聴いて「おおっ!」と打たれるような曲ではないのだが、そこはかとない美しさがじわじわと沁みてくるのだ。覚えやすく、歌いやすい、いわゆる癖になるよなメロディーというやつ。

このヒットを引っ下げ台湾デビューを果たしたJocieこと郭美美の歌は、声の裏返り方といい、ふっと力を抜くタイミングといい、明らかに王菲の影響下にある。中華圏の若い女性歌手がそれと無縁でいることは、現在でもなお相当に難しいのだろうかと、こんなところでも思わされるのである。

ところで、NHK「みんなのうた」で美山加恋によって歌われる今月の新曲「ねずみは米がすき」が、この「老鼠愛大米」に日本語詞がつけられたものだということを知る人はまだ少ない。……と思う。

2006.02