小鳳鳳/祝福

90年代、福建歌謡を牽引した小鳳鳳の、おそらくは93年、18歳での作品。

思えばこの頃、彼女の作品は新旧を問わず毎月のように日本に渡ってきていたような気がする。それらのほとんどすべてを、ぼくは買い漁ったものだが、一時期に集中した買い物は個々の作品の印象を薄めてしまう。まずタイトルを覚えない。ジャケットもうろ覚え。どんな曲がどのアルバムに入っていたかも定かでない。10年もたてばなおさらだ。

そのなかにあって本作が今に至るも強い印象を残しているのは、なんといってもタイトル曲の出来のよさによる。タイのモーラムを思わせるチャルメラばりの音色に導かれるそのイントロは、メロといいリズムといい、ほとんどこの曲の主題であるかのようだ。つまり、まずこのリフが思いつかれたところから紡がれた曲ででもあるかの如く。それほどこのイントロは秀逸だ。で、おもむろに出てくる声。

これが18歳の声なのだ。これが18歳の節回しなのだ。この張り、この腰、この押し出し。はかなげだのセンチだの繊細だの、この年頃の歌い手についてまわりがちな、実は不安定さと下手っぴいさの裏返しでしかない形容とはまったく無縁な、これが小鳳鳳の歌なのだ。ハマりどころにきちんとハマッた上手さを知るがいい。恐ろしいまでに増幅された力を知るがいい。10の力量を持つ歌い手が10の曲に恵まれたときの総得点は20ではなく、どうやら100であるらしい。

99.08