JuJu Club/Pop Gear

デビュー作とセカンド、そしてクリスマス企画のミニ・アルバムから日本独自に抜粋された韓国ジュジュ・クラブのベスト・アルバム。

96年のデビュー・アルバム『16/20』を所有しないぼくには、それを窺い知るために格好の編集アルバムということになるが、わずか2枚のフル・アルバムしか出ていない時点での本作の登場は、韓国における彼らの快進撃ぶりを伝えるものといえるだろう。

実際、タイトル曲「16/20(ジュウロク・ハタチ)」は韓国はもちろん香港などでも大ヒットしたらしい。確かに凄い曲である。なにが凄いかというと、女性ヴォーカリストの声である。好き嫌いの分かれるところではあろうが、これほどインパクトのある声は他にちょっと思いつかない。しいていえば平山みきだが、それをさらにエキセントリックにはじけさせた感じ。アヒル声との形容もよく見かける。がぁがぁと裏返るあたりは言い得て妙だ。

そんな声が、ときにオルタナ、ときにネオアコなロック・サウンドに縦横無尽にのりまくっているのが本作だ。バックを務めるスンヒョンとスンファンのチュ兄弟はフュージョン・バンド出身らしく、なによりもスタジオ・ワークが好きそうな凝った音作りとひねった曲作りを、ここでは存分に楽しむことができる。

ちなみに、ヴォーカルのチュ・ダインだけは芸名で、ジュジュ・クラブ=チュ兄妹というわけではないらしい。

2005.09
JUJU CLUB/2nd RANISANISAFA

97年のセカンド・アルバム。

別曲仕立ての思わせぶりなイントロを伴なう「バットマン」の見事な登場振りに、2曲めにして早くも戦慄を覚える。格好よすぎっ。もう、最高っ。ここでのヴォーカリスト、チュ・ダインは、うねるビートのなかを降臨してくる女神のように後光が差してぼくには見える。思わずひれ伏してしまうほどに。

そこに追い討ちをかけるのが5曲めの「エッセイ・ラヴ」と、8曲めの「あたしが振ろうか?」。横っ面を張られめまいがするような、こうしたスピード感にぼかぁ弱い。また、歌詞に重きを置かずもっぱら音の響きを楽しむぼくにとって、最もインパクトのあるラップといえば韓国語によるものだが、これらの曲での束になって飛来する矢のようなそれは非常に刺激的だ。こんな矢ならば、喜んで矢面に立ちたいとぞ思ふ。

合間のスローないしミディアム・ナンバーもひとひねり加えられた聴き応えのある曲が多いが、代表曲とされる「センチメンタル」以上にぼくが好きなのは9曲めの「私は今日も」。はっとするような美しさに満ちた曲で、アヒル声が影を潜めている点ともあいまって、彼らとしては異色ナンバーといえるかもしれない。

2005.09
JUJU CLUB/1:1

98年のサード・アルバム。

中弛み感を禁じえないのは、セカンドがあまりにも出来すぎていたせいばかりではないだろう。音にとんがった部分がなく、それに呼応するようにチュ・ダインの声にも勢いがない。今回はそういう線で行こうという作戦のような気がしなくもないが、だとしたらハズレだ。ジュジュ・クラブの看板掲げてこれはないんじゃないかとぼくは思う。新しい試みもいくつかあるが、そういうことは他のバンドに任せて、あくまでもセカンドの路線を突き進んでほしかった。どの曲も聴きやすく、小器用にまとまりすぎているような気がしてならないのだ。

そんななかで、3曲めの「ウアイル」がぼくには非常に面白い。チュ・ダインの歌声は、まるでひとつの楽器として機能しているかのようだ。ただ、3分足らずであっさり終ってしまうのが残念でならない。

2005.09
JUJU CLUB/Fun Fun

2000年作、第4集。

ジュジュ・クラブの最高傑作はといえば第2集。
世間的な評価なみにそれはぼくも感じていることだが、この4作めも彼らの到達点のひとつではあるだろうと思うのだ。方向性は少しくちがうが、相当にこれもいい。というか、ぼくは好きだ。前作に感じられた不満がここではすっきり解消されている。すなわち、こぢんまりとはしていないのだ、どの曲もどの音もどの声も。

タイトル曲でもある2曲めに、彼らは勝負をかけてくる。このノリだ。この勢いだ。前作とはまるでちがって聞こえるこの声の押し出しだ。これこそがチュ・ダインなのだ。これがジュジュ・クラブなのだ。気持ちええ〜。ぼくにそう唸らせて、あっさり彼らは勝利する。

勝負がついた後も彼らはその手を緩めない。歌うベースのイントロから早くも名曲を予感させるおセンチ路線の3曲めをはさみ、すっかり場を転換させる4曲め。数え歌のようなコミカルさを持つ曲調に思わずにんまりしてしまうが、前作で感じられた「楽器として機能する声」の、これはまぎれもない完成形だ。見事だ。際立っている。惚れ惚れする。この瞬間、ぼくの最も好きなヴォーカリストのひとりに、チュ・ダインは数えられることになったのだった。

そしてラスト。ポップ・バンドとして括られがちな彼らだが、ドライヴ感溢れるこのサビに、ロックしようとする強い意志と大いなるカタルシスを感じて、ぼくの首は思わず揺れてしまうのである。表情豊かなバンドであるなと思う。

2005.09
JUJU CLUB/5

サブ・タイトルに「So I say:Judain」とあるジュジュ・クラブ、2001年の第5集。
同時にチュ・ダインのソロとして位置づけられているのだろうか。

これまで見るからにやんちゃそうだったチュ・ダインが大人の女性へと変化を遂げたジャケ写にまず驚かされるが、音楽的にも大きな変化がみられる。看板のひとつでもあった早急でコミカルなナンバーは一切なく、居並ぶ曲はどれもシリアスでときに悲壮。ヴォーカルははじけることなくぐっと押さえて、むしろソウルフル。その分、これまでままあった聴き疲れるということはない。

2つのテイクが収められた「It's Alright」はこのアルバムの代表曲といえるのだろうが、物悲しい曲調ともあいまってバンドとしての苦悩を垣間見せられるようで、つらい気持ちがぼくには勝る。それはあたかも『狂気』以降のピンク・フロイド、『ホテル・カリフォルニア』以降のイーグルスを思わせる。味わい深い曲だが楽しくない。楽しくなければジュジュじゃない。

というわけでぼくにはあまりうれしくない作品だが、オンラインゲームが盛んな韓国で、何曲かは複数のゲームとタイアップしてもいるらしい。従来のCDケースではなくDVDケースに収められているのも、そのことと無関係ではないようだ。収納に際して、扱いが面倒で困るのだが。

2005.10
Judain/Touch your heart

はっきりとチュ・ダインを表看板として立ててきた2003年作品。

とはいうものの、70年代のヒット曲「幸せの黄色いリボン」をカバーしている以外はすべてジュジュ・クラブによる作編曲で、実質ジュジュ・クラブの第6集という見方も可能。が、音はあくまでもバック・バンドのそれで、1、2作めに顕著だった、度肝を抜かれるような凝った編曲や音作りはここにはない。

それを物足りなく感じる向きも当然あるだろうが、歌モノとしての充実度は相当に高いとぼくは感じる。というか、好きだこれ、大好きだ。特に8曲め、10曲め。運河のある町を西日を受けながら走る運動部員。あるいは琵琶湖畔を声援送りつつボートと併走する鈴木杏。なんだそれはと思われるだろうが、そんなひたむきさをこれらの曲にぼくは感じて、それがたまらなく愛おしい。どうかすると懐かしくって懐かしすぎて、涙まで出てきそうだ。

さらにはノリよくキャッチーな1曲め、印象的なイントロを持ちいかにも青春歌謡しているふうな2曲め、アヒル声全開の3曲め、ハードに畳みかけてくる4曲めと7曲め、泣きの5曲めなどなど、ぼくにはおいしい曲だらけ。好きだこれ、大好きだ。ジュジュ・クラブはとんがりすぎて苦手だという人にもこれはお薦め。みんなに聴かせて回りたい。

2005.10