キム・ヘヨン/アッサ超特急1

名盤『カンクン・ナムジャ』が話題になって久しかったが、店頭で見たジャケットはなんらそれを予感させることなく、なんとなく敬遠してしまっていた。だから、96年に出たこれが、ぼくには初めてのキム・ヘヨン作品となった。

後になってわかったことだが、ここでの彼女の歌は、以前に録音されたもののピッチを上げたものだという。そこに威勢のいい合いの手をオーバーダブして、本作は仕立て上げられたのだった。

その合いの手というのが尋常ではなく、ヴォーカルを待たずにいきなり炸裂するそれにまず圧倒される。並の歌い手ならば、まちがいなく食われるだろう。だが、キム・ヘヨンはそれをものともしない。胸がくすぐられるほど可憐な声、絶妙の節回しといった歌い手としてこれ以上ない武器で、驚異の合いの手に立ち向かう。

ノン・ストップで20曲に渡って続けられるそのバトルがぼくには愉快でしかも痛快だが、この作品を前にすればどんな人もこう反応するしかない。一緒になって歌うか、もしくは合いの手を入れる。踊り狂うか、笑い転げる。あるいは最初の10秒で聴くのをやめるか。さて、あなたならどうする?

2002.10