LOREENA MCKENNITT/ELEMENTAL

聴き疲れのする声だと思う。気負いすぎているとも思う。
ロリーナ・マッケニット、85年のファースト・アルバム。自ら設立したというレコード会社からリリースされたこの作品で、7曲のトラッドと2曲のオリジナルを披露する彼女はまた、ハープをはじめほとんどの楽器を手がけてもいる。気負いがない方がおかしい。

が、だからといってあっさり切って捨てることのできない魅力を、この作品はたたえている。シンガーという一点のみで彼女を語るのは、たぶんまちがいなのだ。作曲家、ともまだいえない。ハーパーの線もない。では、なにか。クリエイターというのが一番近いんじゃないかと思う。ミュージシャンであるという以上に。

それが最も実感されるのが、男性ヴォーカリストを迎えたトラッド「CARRIGHFERGUS」と、ラストを飾るオリジナル曲「LULLABY」だ。この味わいはどうだろう。構成力はどうだろう。特に後者。これはただのはったりだろうか。雷鳴に続くハープ、そしてスキャットの間隙を縫うかのような低音男声による語り。ながら聴きの手が、これで止まらなかったら嘘だ。丸められた背がしゃんと伸びなければ不感症だ。

あえて自ら歌わず語らずしたそこに、彼女のクリエイター魂を垣間見る。貪欲なその魂は、やがて音のみならず、映像をも支配しようとするのではないかと思う。この曲から喚起されるものはまさにそれなのだから。

1999.04