NICOLE THERIAULT/ON THE WAY

編集物やカバー集を除くオリジナル・アルバムとしては4枚めとなるらしい、2003年リリース作品。

全編通して聴けば実にバラエティに富んだ曲構成ではあるのだが、「Raan Khaai Yaa」のあっけらかんとした明るさは、このアルバムの印象を早くも1曲めから決定づけてしまうほどに強烈で、なんとも楽しい。それはまさに、ぼくが思い描くところのタイ・ポップスのおいしいとこ取り。こうでないといかん。これがタイ・ポップスの醍醐味だ。

そうした影に埋もれてしまいがちだが、特にスローな曲における表情豊かなニコルの歌唱にも耳を傾けたい。それらはどれも、はかなく切なく美しい。なかでも9曲めの「Khang Jai」は往年のピンク・フロイドを彷彿とさせる音の処理がなされ、ぼくには懐かしく響いた。

11曲め「Plao Na」は男性の台詞に導かれて始まるが、それが日本語でしかも「俺の愛を取り戻しにきたっていうのか」と言っていることに気づいたときは、さすがに笑った。昭和30年代の日活映画から引用でもしたのだろうか。

2004.03