ORIGA
ロシア人歌手オリガ、94年のデビュー・アルバム。
ロシア語で歌う彼女が母国ではなく日本でデビューしたというのは、やはり英断を伴う快挙といっていいのだろうか。異国の歌い手の日本デビューに際し、日本語の曲を用意せねば気がすまない人が多い業界にあって。
母国語だからこそ溢れる情感、それ独特の心地よい言葉の響き、発声の妙。詞の意味はわからずとも、そうしたものに身をゆだねるのもまた音楽の楽しみ方のひとつではあるのだ。
自らの声を見事に制御してみせるオリガのロシア語の響きは、そうした聴き手の欲望を満足させるものである。ときに鼻に抜け、裏返って飛翔する声を、ここでは存分に楽しみたい。「マイ・エンジェル」「蝶々さん」「茜色の光線」「ぱにまゆ」といった曲で、それらは堪能できるだろう。
オープニングを飾る「リリカ」は、彼女のおそらくは原点ともいえる曲だが、その真の魅力とメッセージをぼくが理解するのは、96年のミニ・アルバム『アリア』に再録されるまで待たねばならなかった。オリガはここから始まりここに戻るしかないとまで思われる名曲「リリカ」については、『アリア』のなかでこそ触れるのが望ましい。
2002.11 |