潘越雲/精選輯4 紗的吻

驚くべきは潘越雲の『精選輯4』。

「精選」とは言うまでもなくベスト・アルバムを指すのだが、潘越雲の4枚めのベスト・アルバムに87年の『紗的吻』が全曲収められ、しかもジャケットまで流用されていることは驚嘆に値する。思いきったこの措置は、しかし、『紗的吻』の完成度の高さを知れば、極めて当然だったと納得できる。これはそれだけの価値ある作品だ。潘越雲の最高傑作と言うのみならず、台湾ポップス界の最高峰にいまだ位置する作品なのだ。

用意された40曲から絞りこまれた全10曲はどれも粒揃いで、音数の少ない、行間を読ませるかのようなアレンジがまた秀逸。応える潘越雲の歌唱はビシリと抑制がきき、どんな流暢な旋律であっても流されることを潔しとしない。ストイックなその唱法が、楽曲の美しさとスケールをさらに大きなものにしている。

壮大なこの音絵巻は、絶対に台湾からしか出てこない音でありながら、台湾だから、國語だからという次元を完全に、しかも軽く超越している。アジアが誇る最高最大の作品たる所以である。

2003.05